黒点が現れるまでには、樹脂の熱・酸化劣化で生まれる炭化物と、外来異物が入り込む汚染という二つのルートが絡み合っています。さらに、成形機の設計やプロセス条件がそれらの現象を”加速器”として働かせる、ここを押さえることで、対策の優先順位が明確になります。
1 熱劣化
過熱 & 長時間滞留
- スクリューのデッドスポット、逆止弁周辺、ホットランナーの分岐部などで樹脂が動かず、高温にさらされる
- 分解 → 炭化:分子鎖が切れて炭素リッチな黒色粒子に変化(難燃剤入りやナイロン系は特に要注意)
- 付着・成長:炭化物が金属面に張りつき、層状に厚みを増す
- 剥離・混入:射出時の流れやせん断力で剥がれ、製品中に飛び込む
なぜ突然増えるのか?
付着層が”はがれるタイミング”は読めません。安定運転中でも黒点が突発的に増えるのは、このサイクルが裏で進行しているためです。
2 酸化劣化
シリンダー内に残った樹脂が空気と触れ、高温のまま放置されると酸化が急進し、再起動時、その劣化物が流れ出して黒点化します。
ポイント
・停止前は”置換パージ”で空気と直接触れる樹脂を最小化
・再起動前は十分なパージで残留物を一掃
3 異物コンタミ
| 汚染ルート | 代表例 | キーとなる対策 |
|---|---|---|
| 作業環境・取扱い | 埃・繊維・ゴムくず | ホッパーを密閉、静電気防止、こまめな清掃 |
| 材料輸送系 | ペレット摩耗粉、配管内残留、ホースパッキン破片 | 集塵/ストレーナー設置、定期洗浄 |
| 材料・色替えの残留 | 前回材料の粒・微粉 | レシピ化した洗浄手順 |
| 金属摩耗粉 | スクリュー・金型部品の摩耗破片 | 部品寿命管理、摩耗に強い材質への置換 |
| 原料由来不純物 | ペレット製造時の混入物 | 受入検査、サプライヤーと異物基準を共有 |
4 成形機 & プロセス条件
| 分類 | リスク項目 | 影響例 |
|---|---|---|
| 機械側 | スクリュー・シリンダー摩耗、逆止弁の隙間、ホットランナーのデッドエンド | 滞留→炭化促進/金属粉発生 |
| プロセス | 高い溶融温度、温度ムラ、長サイクル、過大シリンダー容量 | 分解速度アップ、滞留時間増大 |
| 非定常操作 | 長期停止/起動、材料・色替え | 酸化劣化物や残留材が一気に流出 |
5 まとめ
- 温度と滞留時間をセットで管理:〈温度プロファイル最適化〉+〈ショットサイズ見直し〉で「過熱 × 長時間」を断つ
- 定期パージをルール化:炭化物の成長を寸断し、色替え残留も同時に除去
- 起動・停止の標準手順を文書化:酸化劣化を抑え、再起動時の異物流出を防止
- 異物アクセスを二重シャットアウト:ホッパー蓋・磁選機・ストレーナーで入口/通路の両方を封じる
以上のように、黒点の発生は「装置の設計や状態(ハード面)」と「プロセス条件の最適化や操作手順(ソフト面)」の両面から影響を受けます。パージ剤は、スクリューやシリンダー、などに付着した炭化物や残留樹脂を効果的に除去する手段として有効です。定期的にパージ作業を行うことで、デッドスポットに溜まった炭化物を早期に排出し、新たな付着・蓄積を抑えることができます。また、材料・色替えのタイミングでも確実に装置内部をクリーニングすることで、クロスコンタミのリスクを低減し、黒点不良の抑制につながります。
射出成形の現場では、不具合が起きてから対処するよりも、事前に機械状態をチェックし、定期メンテナンスやパージを行って「不良の予兆」を早期に取り除くことが理想的です。安定した成形プロセスの実現と歩留まりの改善は、結果的にコストダウンや納期短縮にも寄与します。黒点をはじめとする不良トラブルの抑制に、ぜひパージ剤の活用と適切な予防保全を検討してみてください。


