黒点は「ちょっとした汚れ」に見えても、実際には品質・コスト・顧客信頼の三方面に負の連鎖を引き起こす出発点です。その波及経路を工程担当者の視点で整理しました。
1 製品品質への影響
黒点はまず”見た目”を損なう欠陥ですが、外観基準を超えて機能面や設備にも波及する可能性があります。ここが管理上の要注意点です。
1‑1 外観品質の低下
- 少量でも目立ちやすく、化粧部品・透明部品では NG 判定
- 外観検査の再作業・選別工程を常態化させる原因となる
1‑2 機械的強度・機能への懸念
- 大粒の炭化物や金属片は応力集中点になり、耐衝撃性や耐久性を低減
- スクリュー先端に硬化物が噛み込むと設備摩耗を誘発し、次の不良要因を生成
2 経済性・生産性への影響
黒点がもたらすコストはスクラップだけに留まらず、”見えにくい間接費”が雪だるま式に膨らむのが特徴です。
| 影響領域 | 具体的なロス | コメント |
|---|---|---|
| スクラップ増 | 原料そのものの廃棄 | 不良率 2 %→10 %まで跳ね上がる事例も |
| 材料・労務コスト | 選別、原因調査、清掃に伴う人時 | パージ剤や工具費用も累積 |
| ダウンタイム | パージ・分解清掃・設備修理 | OEE 低下=スループット減 |
| 生産計画の乱れ | 不良率変動で工程負荷が読めない | 納期遅延リスクが拡大 |
| 顧客信頼の損失 | クレーム、返却対応、値下げ要求 | 最終的な取引喪失につながる |
ワンポイント
黒点を発生源で抑制できれば、表のコスト項目はすべて同時に縮小します。逆に言えば、黒点対策は「単一欠陥の改善」ではなく、工場の P/L 改善活動でもあります。
3 因果関係:メカニズム→損失への連鎖
| 段階 | 内容 | |
|---|---|---|
| 1.根本要因 | ホットスポット、摩耗粉、原料汚染など | |
| 2.劣化・汚染メカニズム | 熱分解・酸化 → 炭化物生成 外来異物が溶融樹脂に混入 |
|
| 3.欠陥の顕在化 | 成形品表面・内部に黒点出現 | |
| 4.品質判定 NG | 不良品としてスクラップ化 | |
| 5.運用対応 | パージ/清掃/分解修理/追加検査 | |
| 6.経済・商業的損失 | コスト増、OEE 低下、顧客信用喪失 |
ポイントは1.2.を絶つこと
・温度・滞留時間管理で熱分解を抑える
・定期パージで炭化物サイクルを分断する
・材料と環境の清浄度を高め異物経路を遮断する
まとめ ― “見えないコスト”を見える化して投資判断へ
黒点不良は外観検査の合否問題に留まらず、
- 設備保全費(清掃・修理)
- 生産計画の効率(OEE・リードタイム)
- 顧客との取引継続(価格交渉力)
といった企業体質に直結する指標を悪化させます。
発生源対策に予算と工数を配分することは、結果として経営指標を底上げすることになります。パージ剤メーカーとして、この視点で黒点対策をご提案いたします。


